カルニチン(carnitine)は、生体の脂質代謝に関与するビタミン様物質で、アミノ酸から生合成される誘導体である。動物の体内で生合成されるため必須アミノ酸ではないが、摂取不足や過剰消費によって欠乏症を発症することがある。獣肉類の赤身に多く含まれる。カルニチンは、生体内で脂質を燃焼してエネルギーを産生する際に、脂肪酸を燃焼の場であるミトコンドリア内部に運搬する役割を担う。
日本においては、食品分野で利用されるL-カルニチン、先天性カルニチン欠乏症の治療薬としてのレボカルニチン、胃薬のDL-カルニチンがある。立体異性体のうち脂質代謝に利用されるのはL-カルニチンのみであり、エナンチオマーのD-カルニチンは活性がないとされている。以下は特に断らない限りL-カルニチンについて記述する。
カルニチンは、1905年ロシアの化学者により肉抽出エキス中に発見され、1927年に構造決定された。当時チャイロコメノゴミムシダマシ(Tenebrio molitor)に必須の成長因子として、ビタミンBTと名付けられた。1960年代までにカルニチンが長鎖脂肪酸のエネルギー代謝に必須の物質として認識され、その後も生理機能に関する研究が続けられている。なお、生体内で微量生合成されることがわかり、先述のビタミンの名称は現在では使われていない。 ...
ウィキペディアでもっと読む