トキソプラズマ症とは、トキソプラズマ(Toxoplasma gondii)による原虫感染症である。世界中で見られる感染症で、世界人口の3分の1が感染していると推測されているが、有病率には地域で大きな差がある。健康な成人の場合には、感染しても無徴候に留まるか、せいぜい数週間のあいだ軽い風邪のような症状が出る程度である。しかし臓器移植後やエイズ患者など、免疫抑制状態にある場合には重症化して死に至ることもあり、重篤な日和見感染症といえる。重症化した場合には、脳炎や神経系疾患をおこしたり、肺・心臓・肝臓・眼球などに悪影響をおよぼす。また、妊婦が初感染すると胎児が先天性トキソプラズマ症を発症する場合がある。予防するためのワクチンはない。
トキソプラズマはアピコンプレックス門に属する単細胞生物である。以下の3つの形態をとる。
栄養型は急増虫体(タキゾイト)と呼ばれており、細胞内に寄生して無性生殖により急激に増殖する。消毒液や胃酸などに対する抵抗性を持たないため、これを摂食しても感染は起きにくい。しかし眼や鼻の粘膜や外傷から感染することがある。
脳や筋肉の組織中に厚く丈夫な壁に包まれた球形のシストを作る。シストには数千におよぶ緩増虫体(ブラディゾイト)が含まれており、無性生殖によりゆっくりと増殖している。シストは室温でも数日、4 ...
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