神経梅毒 (しんけいばいどく) とは、梅毒の中枢神経系への感染を指す。神経梅毒の症例の大部分は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染した患者で報告されている。初期の梅毒に最も共通して現れる神経学的な症状は髄膜炎である。第3期梅毒 (tertiary syphilis) の症状は主に神経梅毒であるが、神経梅毒自体は感染のどの段階でも起こり得る。
神経梅毒の診断では脳脊髄液を採取するため腰椎穿刺が行われ、特定の梅毒トレポネーマの抗原に対する抗体検査が行われる。望ましい検査法はVDRL法 (Venereal Disease Research Laboratory test) であり、FTA-ABS法 (fluorescent treponemal antibody absorption test) が補完的に行われることもある。
歴史的には、この疾患はタスキギー梅毒実験で研究されており、科学における不正行為 (研究倫理の問題) の例として最も有名な例の1つである。研究は未治療の梅毒を持つアフリカ系アメリカ人約400人を対象として1932年から1972年まで経過観察が行われ、梅毒に感染していない約200人との比較が行われた。研究は参加者のインフォームド・コンセントのないまま開始され、アメリカ公衆衛生局によって1972年まで継続された。研究者はペニシリンが神経梅毒の効果的な治療薬であることが判明したのを知りながら、それを患者に知らせず治療を差し控えた。4年の観察期間の後、患者の26.1%、対照群の2.5%で神経梅毒が ...
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