アツモリソウ属 Cypripedium は、ラン科植物に含まれる分類群の一つ。温帯性で、大きな袋状の唇弁を持つ。
アツモリソウ属は、ラン科アツモリソウ亜科に所属する。この亜科に所属する四属の内、唯一温帯域に分布を持ち、一部は高山帯やツンドラなど、極めて寒冷な気候の地域にも生育する。
花は大きな袋状の唇弁が特徴的で、アツモリソウはこの唇弁を平敦盛の母衣に見立てたものである。英名はLadys slippersなど、やはり唇弁の特徴にちなんだものとなっている。学名はCypros(ビーナスの島)とpedilon (サンダル)からなり、「ビーナスのスリッパ」の意で、やはり唇弁の形に基づく。
なお、このような特徴はアツモリソウ亜科に共通するが、この属のものは植物体の地上部が夏緑性であることや茎が立ち上がることなどで区別される。
日本産のものは園芸目的の採集圧のため絶滅が危惧されているものが多い。
夏緑性で多年生の草本で地上性のラン。地中には多少とも横に這う根茎を持ち、地上に茎を立てる。茎には数枚の葉を持ち、種によっては二枚が発達して対生のように見える。葉は幅広く膜質で多くの脈があって膝折れになっている。たとえばクマガイソウは匍匐茎を長く伸ばし、間を置いて茎を立て、茎には楕円形の幅広い葉を対生状につける。アツモリソウは根茎はごく短く、互いに接するように茎を立て、茎には ...