ジャノヒゲ(蛇の髭、学名:Ophiopogon japonicus)は、キジカクシ科ジャノヒゲ属に分類される常緑多年草の1種。リュウノヒゲ(竜の髯)、ネコダマ(猫玉)ともいう。
和名ジャノヒゲは、一説にはジョウノヒゲが転訛して、ジャノヒゲになったと考えられている。漢名を麦門冬(ばくもんとう)というが、『本草綱目啓蒙』では麦門冬の別名として「ジヤウガヒゲ」を挙げていて、ここでいう“ジヤウガヒゲ”(ジョウノヒゲ)は「尉(じょう)の鬚」という意味であり、能面で老人の面である「尉(じょう)」の面の顎鬚(あごひげ)に、葉の形を見立てたものと推測されている。また同様に葉の形状から、ジャノヒゲ(蛇の鬚)は別名リュウノヒゲ(龍の鬚/竜の鬚)ともいわれ、細い葉をヘビやリュウの髭に見立てたのが名の由来とする説もある。
日本での古名は「やますげ」の名で奈良時代に成立した『万葉集』の歌なかでも詠まれている。ただし、「やますげ」は同じキジカクシ科スズラン亜科のヤブランであるとする説もある。江戸時代の代表的な方言集『物類呼称』では、麦門冬を尾張で「蛇のひげ」と言うとする記述が見られ、『本草綱目啓蒙』でも、近江で「ジャノヒゲ」と称すると書かれており、さらに『物品識名』にも「ジャノヒゲ」の名称が挙げられている。『古典の植物を探る』(八坂書房)の著者である細見末雄や、『植物和名の語源探求』(同)の著者の深津正による説では、「ジャノヒゲは蛇の鬚ではではない」と説明している。 ...