胸部大動脈瘤(きょうぶだいどうみゃくりゅう、英: thoracic aortic aneurysm、略称: TAA)とは、主として胸部大動脈に存在する大動脈瘤のことであり、胸郭内の大動脈壁が全周性または局所性に突出した状態を指す。
胸部大動脈瘤は腹部大動脈瘤と比較して頻度は高くないが、未治療ないし未発見のまま放置されると、瘤壁の解離や瘤の破裂のために致命的になる恐れがある。
大動脈の正常径は一般的に胸部で30mm程度である。瘤状に突出、または嚢状に拡大して瘤を形成する場合、または直径が正常径の1.5倍、即ち胸部では45mmを超えて拡大した場合に「瘤(aneurysm)」と称するが、それ以下の場合は「瘤状拡張(aneurysmal dilitation)」と称することがある。部位については、上行・弓部・下行大動脈瘤にそれぞれ分類される。上行瘤は大動脈弁輪から腕頭動脈を分岐するまで、弓部瘤は腕頭動脈起始部から第3から第4胸椎の高さ(肺動脈の左右分岐の部位)まで、下行瘤は第3から第4胸椎の高さから下方の部分をいう。
胸部大動脈瘤の原因は複数のものが考えられているが、40歳未満の若年層の場合はマルファン症候群やエーラス・ダンロス症候群、または先天性大動脈二尖弁などのような結合織異常を来す疾患に起因する大動脈壁の脆弱化により、特に上行大動脈に大動脈瘤を発症することが多い。大動脈解離に続いて胸腹部大動脈瘤を発症することも ...
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