コチョウラン属(Phalaenopsis)は、熱帯域に分布するラン科植物の一群で、幅広い葉を折り重なるように着ける。洋ランとして広く栽培されるが、それには属間交配種が混じっている。この項ではその両方について述べる。
コチョウラン属は単軸性の着生植物で、分厚い数枚の葉を茎につけ、長い花茎を伸ばして、そこに丸っこい花を多数つけるものがよく知られる。和名のコチョウランは P. aphrodite に与えられており、この花が蝶に似る事に由来する。学名の方は phalaia(蛾)と opsis(似る)を合成したもので、この種によく似たファレノプシス・アマビリス P. amabilis の花が蛾に似ることに由来する。英名は Moth orchid と、やはり蛾のランである。これらの種に見られるのが一般的なコチョウランのイメージであり、これらの種そのものも、それらに由来する交配品も多く栽培されている。しかし、この属には一見ではこれらとはかなり異なる姿のものもある。また、それらにも栽培されている種は数多い。洋ランとしての略称はPhal.である。
また、この属に近縁なドリティス属との交配品はドリテノプシス属とされるが、実際にはそれらもコチョウランの名の下に流通しており、特に標記されていない限り、区別は困難な状況にある。従ってこの項では分類学上の群としてのコチョウラン属について記し、洋ランの一群の総称としてのコチョウランについても別にまとめる。 ...