イチビ(莔麻、学名:Abutilon theophrasti)は、アオイ科イチビ属(アブチロン属)の一年草。インド原産。別名にキリアサ(桐麻)、ボウマ(莔麻)など。かつては繊維植物などの用途で広く栽培されたが、現在では利用法の多くが廃れ、もっぱら畑地に害を与える雑草として知られる。
高さは1.5mから時に2.5mに達し、全体に異臭がある。葉は互生して長い葉柄を持ち、長さ8~10cmの心臓形で、縁には浅い波状鋸歯がある。株全体に白く短い軟毛が生えるが、特に葉の裏面に密生しビロードのような手触りがある。夏から秋にかけて径2cmほどの黄色の花が葉腋から上向きに咲く。果実は半球形で径2cmほど、12~16の分果が環状に並んでおり、各分室に3~5個の種子が入る。熟すると縦に裂ける。腎臓型の種子は黒色で長径3.5mmほど、毛が密生する。種の皮は硬いため20年以上にわたって発芽能力を保持する。そのため、一度種子が土壌に撒かれると長期間イチビの発生に悩まされることとなる(シードバンク)。
インド原産。現在ではアジア、南ヨーロッパ、北アフリカ、オーストラリア、北アメリカなど、世界の熱帯~亜寒帯に広く外来種として帰化している。日本には中国を経由して古代に伝来し繊維植物として利用されていたと考えられ、江戸時代には栽培の記録もあるが、古代から栽培されていた種と、現在日本全国に帰化植物として定着している種とは遺伝的に別系統であ ...